新型コロナウイルスの蔓延防止策として外出の自粛要請が出されてからしばらく経ち、私たちの生活はすっかりと変容してしまいました。
リモートワークやオンライン飲み会という言葉も日常的に使われるようになり、人とのつながりが薄く、広くなっていくことを感じる方も少なくないでしょう。
そんな状況だからこそ、だれかと暮らす「シェアハウス」という暮らし方が再び注目を集めています。「住みたい」はもちろん、「シェアハウスを作ってみたい」という声もよく耳にするようになりました。
この記事では、シェアハウスを作りたいと考えている方に向けて、10年以上シェアハウスを運営してきたまたたびが、物件の取得から運営のコツに至るまで、幅広くシェアハウス運営に必要なノウハウを伝授しています。ぜひ参考にしつつ、自分の理想のシェアハウス像を思い浮かべてみましょう。
そもそもシェアハウスってどんなもの?
シェアハウスと聞くと下宿や寮生活を思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、実際のシェアハウス生活はもっとプライベートや自由が確保されています。
若者がひとつの戸建てを共有しながら、普通よりもちょっと近い距離感で暮らすという点を除けば、普通の一人暮らしと大きく異なることはありません。
また、「シェアハウスっていつでも住人と一緒に過ごさなきゃいけないんでしょう?」という印象があるかもしれませんが、実際は自室(専有部)が確保されていたり、人のいない時間帯にリビングなどの共用部でゆっくりと自分の時間を過ごしたりできます。
どんな人が住むのか、住人の数はどれくらいなのか、年齢層や男女の比率はどれくらいなのか、といった細かな部分は、シェアハウスのコンセプトや住人層によってさまざま。一概には言えませんが、若者向けの男女混合シェアハウスが主流です。
たとえば、私たちが運営しているシェアハウスまたたびでは「知らない誰かと家族になれるおうち」をコンセプトに、家族型シェアハウスの運営を続けています。
住人同士の仲が良く、普段は話さないような深い対話がよく生じています。
いっぽう、深い対話が苦手だったり、コミュニケーションが極度に不慣れだったりする方は面談の時点でお断りをさせていただくことで、良質なコミュニティを存続させています。
他人だったはずの誰かと友人になり、対話を通して次第に家族になっていく。「人と人のつながり」に特化しているのが家族型シェアハウスです。そして、家族型シェアハウスを代表するのが、私たち「またたび」です。
一口にシェアハウスと言っても、シェアハウスの掲げるコンセプトや運営方法によって、雰囲気や住人さんのタイプ、年齢・性別が大きく変わってくるのです。
そこで、まずは一般的なシェアハウスの定義から確認していきましょう。
国土交通省が定義する「シェアハウス」とは?
国土交通省が発行しているシェアハウスガイドブックによると、シェアハウスは以下のように定義されています。
一つの賃貸物件に親族ではない複数の者が共同で生活するいわゆる「シェアハウス」と呼ばれる共同居住型賃貸住宅
少し言葉が難しいですが、一言でいえば「知らない誰かと一緒に一軒家で暮らす」ことをシェアハウスと定義しています。また、ガイドブックでは以下のように解説が続いています。
一般の賃貸住宅とは異なり、リビング、台所、浴室、トイレ、洗面所等を他の入居者と共用して、共用部分の利用方法や清掃・ゴミ出し等に関する生活ルールが設けられていることが多い点が特徴です。
シェアハウスは、前提として、家族や知り合いでない人と共に一軒家で暮らす生活様式ですから、「自分の部屋以外」は基本的に共用部として考えられます。
例えば私たちが運営するシェアハウスまたたびも、水回りやリビングといった空間はすべて共用部として捉えています。
そのため、誰もが気持ちよく生活を送れるように、門限や入浴・洗濯の時間帯などに一定のルールを置いているシェアハウスも多いです。
またたびは「ルール?なにそれ美味しいの?」というスタンスで運営していますが、例えば都市部のシェアハウスなどは海外の方も多く入居するため注意が必要。しっかりとルールを設けておかないと、文化や風習の違いによって人間関係のトラブルに発展してしまうケースも考えられます。
シェアハウスとゲストハウスの違いは?
シェアハウスとゲストハウスを混同されている方も少なくありませんが、改めてふたつの違いを確認してみましょう。
シェアハウスの特徴
・半年以上の長期入居がメイン
・入居目的は「その土地に長く住む」ため
・ゲストハウスほど立地にこだわらなくてよい
・プライベート空間としての個室が確保されやすい
次に、ゲストハウスの特徴について紹介します。
ゲストハウスの特徴
・数日から数か月の短期入居がメイン
・入居目的は「旅行や観光の宿として利用する」ため
・市街地や駅の近くでないとアピールに欠ける
・ドミトリーが多く個室やプライベートの空間が少ない
このような違いによって区分されていますが、実はゲストハウスとシェアハウスの間に法的な区分は存在しません。
2018年に施行された新旅館業法では、シェアハウスもゲストハウスも、厳密には簡易宿所営業という名称で定義されています。
これはペンションやカプセルホテルと同じ括りに入るもので、シェアハウスもゲストハウスも、営業するには都道府県知事の許認可が必要です。
シェアハウスの構造設備基準には要注意?
先ほど紹介したように、シェアハウスは簡易宿所営業の許認可を得なければ営業できません。そのためには、シェアハウスとして使う建物が、構造設備基準という条件をクリアしている必要があります。
字面を見ると恐ろしくなってしまいますが、具体的には、お風呂はあるか、換気や照明は問題ないか、などの「住居として備えておくべき条件」が問われているだけなので、条件をクリアしていない物件はほぼ存在しないと考えて大丈夫です。
シェアハウスにはどんな種類があるの?
近年のライフスタイルの多様化を受けてか、生活に対して多様なニーズを持つ若者が増えてきました。そうしたニーズの多様化を受けて、シェアハウス業界にも様々なコンセプトや特徴を持ったお家が誕生しています。
シェアハウス黎明期から人気が高いのは、国内にいながら留学経験ができる「海外系シェアハウス」です。
シェアハウスは一般の賃貸物件と比べても入居審査が緩く、海外の方でも気軽に入居できます。そのため、日常的に外国語を話す海外の住人と触れ合える環境をウリにした海外系のシェアハウスは、以前から人気を集めていました。
また、起業系シェアハウスも若者を中心に根強い支持を集めています。
様々なバックグラウンドを持った住人が集まって共同生活を送るシェアハウスだからこそ、刺激を与えあって夢へ向かおうとするエネルギッシュな若者が集まりやすい傾向があります。その最たる例が起業系シェアハウスと言えます。
また、田舎でスローライフを送りたい方にうってつけなのが「農業系シェアハウス」。自分たちの畑を使って好きな作物を育てたり、農業を体験してリフレッシュしたりと自然が大好きなオーガニック志向の方が集まる印象があります。
シェアハウスを作る手順や方法を紹介
巷で見かけるシェアハウスの多くは、不動産屋さんが持ち物件をシェアハウス化したり、一軒家のオーナーさんがシェアハウスを始めてみたりというきっかけから始まったものです。
つまり、シェアハウスを作るために必要なものは「家」のみと言えます。しかし、シェアハウスを「運営していく」と考えると、途端にそのハードルは高くなりますし、必要なものも増えていきます。
シェアハウス運営を専門にしている事業者は全国を見てもそう多くありません。
ここからは、10年以上のあいだまたたびを運営して見つけた「シェアハウス運営に必要なこと」を、シェアハウスを作る手順と共にわかりやすく解説していきます。
Step1.「誰のための」シェアハウスなのか考える
シェアハウス運営は業態だけを見れば不動産投資とも捉えられますが、建物や立地といった数字だけを見ていても良いシェアハウスは生まれにくいのです。
またたびでは、シェアハウスを長く大きく存続させる秘訣は「コミュニティ運営」のスキルを磨くことである、と考えています。
そこで大切になってくるのが、そもそも「誰のためのシェアハウスなのか」という点です。
どのような人に入居してほしいのか、どんな暮らしを送ってほしいのか、という点を突き詰めていけば、求めるシェアハウス像が見えてきますし、それに合わせて物件の確保や住人さんの入居審査、間取り、家賃設定などが行えます。
まずはどのようなシェアハウスを作りたいのか、なぜ自分がシェアハウスを作ろうと思ったのか、という点に立ち戻って、考えてみましょう。
Step2.シェアハウスにする物件を探す
理想のシェアハウス像やコンセプトが固まったら、いよいよシェアハウスにする物件を探していきます。物件を探す方法は、大きく以下の3通りです。
シェアハウス物件を探す方法
・Webサイトや問い合わせでひとつずつ物件を探す
・不動産屋さんに依頼して探してもらう
・シェアハウス業者に依頼して探してもらう
それぞれ詳しく見ていきましょう。
〇Webサイトや問い合わせでひとつずつ物件を探す
まず初めに思いつくのが、SUUMOやライフルホームズなどの物件情報を取り扱っているWebサイトで物件を検索する方法です。
地道に探していくため根気が必要ですが、シェアハウスにぴったりの物件が見つかることもあるので、定期的に探してみることをおすすめします。
また、初めのうちは相場観やシェアハウス化した際のイメージを持つためにも、様々な物件を探してみましょう。家賃や購入価格を比較したり、実際に内見に伺ったりすると、より運営のイメージがつかめるようになります。
〇不動産屋さんに依頼して探してもらう
自力で探すのも一つの手ですが、不動産屋さんのネットワークに頼ってみるのもおすすめです。
様々な不動産オーナーとやり取りする不動産屋さんと協力できれば、素早く、望み通りの物件に出会える確率が高くなります。
また、地域の不動産屋さんであれば土地勘もあるので、エリアの特徴やそこに住む人の特徴なども教えてもらえるのがメリット。自力での物件探しと並行して、不動産屋さんとの関係も構築していくことをおすすめします。
〇シェアハウス業者に依頼して探してもらう
すでにシェアハウスを運営している企業に依頼して、物件探しを手伝ってもらうのも一つの手です。
すでに相場観や不動産屋さんとのネットワークも構築済みであることが多く、物件探しの手間を大幅に短縮できます。
中には、またたびのようにフランチャイズオーナーを募っているシェアハウス業者も存在するので、様々なシェアハウス運営者への道のりを検討してみるのも良いでしょう。
もし私たち「またたび」にご興味を持っていただけた際は、ぜひお気軽にご相談ください。物件をお持ちの方だけでなく、運営に携わってみたい方も募集しています。
Step3. 物件交渉
お気に入りの物件を見つけたら、いよいよ不動産屋さんやオーナーさんとの交渉フェーズに入っていきます。シェアハウスを始める際の最も大きなハードルが、この交渉フェーズと言っても過言ではありません。
実は、シェアハウスに対して好意的なオーナーさんは少なく、シェアハウスとして貸し出すデメリットを取り除いたり、納得していただかなければ、なかなか契約まで話が運ばないのです。
そのため、交渉で必要なものは多岐にわたります。具体的には、シェアハウスに対する知識や熱意、お金、社会的信用、今後の事業計画などです。このあたりに関しては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
また、実際に交渉を進める中では、家賃の交渉や使用範囲、サービス品など権利義務に関する内容も議論する可能性があります。
あらかじめ不動産やシェアハウスに関する最低限の知識を備えておくと交渉がスムーズに運ぶでしょう。こうした予備知識については、以下の記事で紹介しています。
交渉もうまくまとまり、いよいよ契約へ進む運びとなったら、契約条項についての最終交渉を行います。以下の記事では、シェアハウスとして賃貸契約を結ぶ際にぜひ覚えておいてほしいポイントについてまとめているので、参考にしてみてください。
あとは、前払家賃や初期費用を支払って物件の契約は完了です。理想的なシェアハウスの実現に向けて、ハウス内の準備に移りましょう。
Step4.ハウスづくり
空っぽの状態で借りた一軒家をシェアハウスとして運用していくためには、最低限の生活家電や家具が必要です。リビングやキッチン、玄関、廊下、洗面所、お風呂などを回ってみると、意外と多くの生活用品が必要だと気づきます。
それぞれの空間に必要なものをリストアップして揃えていきましょう。具体的に必要になるものや、あったほうが良いものについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
Step5.マーケティング
シェアハウスとして必要なものがそろったら、いよいよ住人さんを募集します。シェアハウスでおすすめのマーケティング施策は、大きく2つに分けられます。
シェアハウスのマーケティング(集客)方法
・オンラインでの集客
・オフラインでの集客
基本的にはオンラインでの集客がメインになりますが、イベントの開催などオフラインの施策を通して地域での知名度を上げながら新住人を呼び込んでいるシェアハウスも少なくありません。
こうしたシェアハウスならではのマーケティング施策も加味しつつ、基本的にはWebからの入居申し込みが来るようにオンラインでの集客に取り組みましょう。
オンラインで集客するためには、Webサイトの制作やコンテンツマーケティング、SNS運用、ポータルサイトの活用など、事前準備と日々の運用が必要不可欠。コツコツと取り組んで、住人さんとのめぐり逢いを待ちましょう。
Step6.問い合わせや面談、入居手続き
マーケティング施策が実を結び、「一緒に住んでみたい」「ぜひあなたのシェアハウスを見せてほしい」という連絡が入ったら、シェアハウスの内覧を行います。
ハウス内の案内はもちろんのこと、会話を通して、その人がどんな人なのか、一緒に暮らして楽しめそうか判断していきます。
内覧後にお互いが入居について合意していたら、入居面談へと移りましょう。
ちなみに、またたびでは良質なコミュニティ運営のために8割程度の入居希望者さんをお断りしています。
またたびが面談で量る基準は多岐に渡ります。一例としては、「自分の人生を自分で生きようとしているか」という深い人間性の部分や、「一緒にご飯を食べて楽しいか」というライトな部分も含めて、会話の中で総合的に判断しています。
シェアハウスの面白さや魅力は、お家のクオリティではなく住人さんの人柄に依るところが大きいです。
その礎となる面談は、シェアハウスの質や方向性を決定づける大切なステップ。初めのうちは緊張するかもしれませんが、聞きたいことを素直に聞けるよう心掛けるのが大切です。
問い合わせや面談の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
Step.7.入居契約書の締結
面談を経て新住人さんをお迎えする段になったら、最後の大仕事である「入居契約書の締結」を行います。
オーナーさんや不動産屋さんから物件を借りる際に取り決めた禁止事項や、気持ちよいシェア生活のために守るべきルールなどを提示し、新住人さんとお互いに確認します。
始めてシェアハウスを運営する方にとって、契約書に記載すべき内容にはどんなものがあるのか、イメージがつかないこともあるでしょう。またたびでは、実際に以下のような契約書を用いて入居契約を交わしています。
ぜひこちらを参考にしながら、オリジナルの契約書を作り上げていってください。
問題がなければ契約書に署名・押印をいただいて、手続きは終了です。ここまでお疲れさまでした。もっと詳しく入居の手続きや契約について知りたい方は、以下のページを参考にしてみましょう。
シェアハウスは作るより運営するほうが難しい
シェアハウスの作り方について、各ステップごとに詳しく解説してきました。
これからハウスの運営を始めたい方は、ぜひこの記事を参考にしながら自分が作りたいシェアハウス像を明確にして、始めの一歩を踏み出してみてくださいね。
また、これらの手続きや契約書作成がわからないという方は、ぜひ弊社までお気軽にご相談ください。シェアハウス立ち上げのサポートはもちろん、フランチャイズという形でのパートナー制度もご用意しています。
まずは、あなたのシェアハウスに対しての想いを聞かせてくれると嬉しいです。